「数字で語れる経営」の全体像を描いてきた本シリーズ。
今回はその最終回として、構造化された経営モデルをどう運用し続けるかにフォーカスします。
1. 経営モデルは、つくって終わりではない
「事業計画は作ってからが勝負」
そう言われても、ピンとこない方も多いかもしれません。
でも、こう考えてみてください。
予算を作って、会議で説明して、次の期になったら見直して──
この繰り返しが「事業計画の仕事」だと思っていませんか?
それでは、構造的な改善や再現性は生まれません。
2. 良い事業計画とは、「仮説を内包した構造」である
たとえば、BtoB SaaS企業における次のような事業計画があったとします。
- 売上高:前年比+25%
- 成長要因:新規チャネルからの流入増
このときに問うべきは、「その売上増は、どの変数が、どのくらい動いた結果か?」という点です。
- CPAはどれくらい想定しているか?
- コンバージョン率はどこまで改善する想定か?
- 商談件数をどれだけ増やすつもりか?
- 営業人員数や教育施策にどんな仮説を立てているか?
良い事業計画は、こうした「仮説」が内包された構造を持っています。
3. 「なぜズレたか」を説明できる構造が、次の意思決定につながる
計画と実績がズレたとき、数字だけで一喜一憂するのではなく、構造的に要因分析できることが大切です。
- コンバージョン率の改善が未達→LP改善の施策が弱かった?
- 商談数は増えたが受注率が悪化→育成不足か?対象顧客がズレた?
- 人員は増えたが成果に繋がっていない→オンボーディングに課題?
「なぜうまくいった/いかなかったか」を言語化できる構造こそが、次の手を打つためのベースになります。
4. KPIツリー×事業計画の連動が、組織にナレッジを蓄積する
KPIツリーを基礎にした事業計画は、「数字の変化の意味」を分解しやすくします。
KPI | 施策との関係 | 数字の意味 |
CVR(成約率) | LP改善、トークスクリプト | 顧客体験や訴求力の良し悪し |
商談数 | 広告投資、ターゲティング | 見込み客の流入量・質 |
営業人員数 | 採用数、立ち上げ施策 | 投下人材の活用度合い |
このように、「施策」と「数字」を構造でつなぐことで、
数字が語る意味が、チーム内に言語化され、ナレッジとして残っていくのです。
5. ROICツリーとの接続が、“全社”をつなぐ
一つの事業だけでなく、全社の投資判断・資源配分にも構造が必要です。
各事業のKPIツリーを、ROICツリーに接続することで、
- 施策とROICのつながりが明確になる
- CFO/経営企画と現場の共通言語ができる
- 全社の資源配分に納得感が生まれる
つまり、「仮説→実行→検証」の高速ループが、部門を超えてつながるのです。
6. 最終回まとめ──再現性ある経営の“運用フェーズ”へ
本シリーズでは、以下の構造を軸に「数字で語れる経営」の作り方を紹介してきました:
- ROICという経営指標の本質と活用方法
- KPIツリーの構築法と注意点
- ROICツリー×KPIツリーの統合モデル
- FP&Aチームの役割と体制づくり
- 数字は“作ったあと”が勝負──事業計画のアップデート法 ← 本記事
ROICという戦略の言語、KPIという現場の言語、それらを接続するFP&A、そして構造的な事業計画。
この仕組みを「アップデートしながら回す」ことで、経営は再現性を持ち始めます。
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メーカー営業から出産を経てフリーランスに転身。 ライティング・編集・校正業に携わる。 2025年にマーケ担当としてプロフィナンスにジョイン。