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Chapter 03事業開発の基礎4分で読めます

成功に至るための基本

森勝 遼太郎
森勝 遼太郎
CPO
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新規事業の立ち上げ期には、「あの会社のやり方をそのまま持ってくれば、うちでもいけるのではないか」という発想が必ず現れます。

しかし、簡単に持ってこられるような「成功の型」はありません。
個々の案件がうまくいくかどうかは、市場のタイミング・自社のアセット・偶然の出会いに左右される水物だからです。

ですが、成功しやすい体制ならつくることができます。これが本章、そして本書全体の主張です。

個々の成功は予測できませんが、事業が生まれる可能性を高めることはできます。
本章ではまず、そのコアの考えとなる「事業を生み出す方程式」を示し、そこからチームの在り方を解説します。

事業を生み出す方程式

チームから生まれる事業の数は、次の式で考えることができます。

事業数 = 案件数 × 事業化率

そして、並列できる案件数は次の割り算で決まります。

案件数 = 総リソース ÷ 案件リソース

  • 総リソースとは、チーム全員の使える時間の合算
  • 案件リソースとは、1つの案件が占有する人と時間
  • 事業化率とは、各ステージの承認を超えて最終的に事業化される率

つまり式全体では、事業数 = 案件数(総リソース ÷ 案件リソース) × 事業化率 となります。

事業を生み出す方程式。事業数は案件数(総リソース÷案件リソース)と事業化率のかけ算で決まる

これはあくまで考え方のモデルであり、具体の件数や確率を精緻に予測する式ではありません。
それでもこの式が有用なのは、チームとして次にどこへ手を打つべきかを、変数ごとに切り分けて議論できるようになるからです。

事業化率はコントロールできない

事業化するとは、初期の選別から事業化の判定まで、数々の承認を超えるということです。つまり、式の中の事業化率を直接狙って上げることはできません。

案件の質を高めるというアプローチが、結果的に事業化率を上げることはあるかもしれませんが、あくまで結果指標です。

事業化率を構成する個々のゲートの通過率ならコントロールできるように見えますが、ここをさじ加減で緩めてしまうと探索がブレはじめます。
とくに、各ステージの承認を甘くしたときが典型です。

  • 筋を確かめていない案件が後段に流れ込み、リソースをロックする。
  • 通りやすさに合わせて案件が矮小化していく。
  • 一度通した案件は止めにくく、見込みがなくても判定が先送りされる。

どれも見かけの活性度と引き換えに、本来目指すべき事業数そのものを減らします。

国内の実態調査でも、案件はリリースや黒字化といった後半のステージまで、なだらかに減り続ける放物線のような形が示されています。

これでは通過するだけリソースを食いつぶしてしまうのです。

式を成り立たせるには、上述のように「進めること」を前提とせず、

  • 撤退するならできるだけ早く決める
  • 推進するなら厳しい基準で選定する

の2点が重要です。
全く同じ事業化率に落ち着いたとしても、かけるリソースが断然減り、選別できる案件も増えていきます。

案件の残存カーブの現実と理想。現実はステージ後半までなだらかに減り続ける放物線型で、検証が最も高くついてから落ちる。理想は序盤で厳しく落としつつ徐々に減る形で、最終の事業化率が同じでも、早く浮いたリソースを残った案件と次の仮説に集中できる

打ち手は、式の4つの項

承認のさじ加減で解けない以上、打ち手は式の項を直接動かすことになります。

  • 案件を生み出しやすく、基準を厳しく — 創出のコストを下げて母数を桁で増やし、明文化した基準で選別する。厳しい基準は、十分な母数があって初めて機能します。
  • 案件リソースを減らし、総リソースを増やす — 作業や思考の負担を軽くし、出戻りやゾンビ化といったムダとリソースのロックをなくす。
  • 自走率を上げる — 「複数人で1案件」から「1人で複数案件」へ。人数の実効値が上がり、新人や中途も早く戦力になります。
  • 各項を計測し、改善し続ける — どの項がボトルネックかを見て、そこに手を打つ。式は一度きりの診断ではなく、回し続けるための計器盤です。

案件リソースの中身は人と時間です。時間を縮めるとは急かすことではなく、1回の検証で確かめる問いを小さく絞り、意思決定に必要な最小限の確認で次へ進む設計のことです。具体的な設計は事業開発の進め方で扱います。

型ではなく、式で考える

成功の型はありませんが、式は最初から見えています。
個々の案件の結果も大切ですが、案件を生み出しやすくできているか、案件リソースを軽くできているか、基準を厳しく保てているかを見る。
本章の考え方は、これに尽きます。

そしてこれは、チームを率いる人だけの考え方ではありません。担当者ひとりの単位でも、同じ式が回っています。
自分の持ち時間が総リソースで、抱えている案件がそれを占有しています。手応えのない案件を握り続けることは、別の探索に使えたはずの自分の時間をロックすることです。

一人ひとりがこの式で考えている状態こそが、冒頭に書いた「成功しやすい体制」の中身です。
まずは式の心臓部である検証から。次章事業開発の進め方に進みます。

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