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Chapter 02事業開発の基礎5分で読めます

新規事業チームのミッション

森勝 遼太郎
森勝 遼太郎
CPO
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新規事業チームのミッションは、事業を生み出すこととされています。
現に、多くの調査レポートで、新規事業チームは3年で数百億、といった目標を与えられていることが多いです。

一見、無理難題に思えます。当たるかどうかなんてわからないのに、一体どうやればいいのか。経営は何を考えているのか。
わからなくなってしまうことも多々あるでしょう。

本章では、チームがなぜ組織に生まれるのかを本音と建前の両面から洗い出します。
そのうえで、実のところ、新規事業チームに求められているのは売上ではない(ことが多い)という点について、深掘りしていきます。

新規事業チームが生まれる理由

新規事業チームの設立には、対外的に説明される理由と、組織の内側の事情が混ざっています。まず両方を並べます。

対外的に説明される理由

理由背景チームへの期待
資本市場への回答2023年、東京証券取引所が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を要請。余剰資金を何に使うのかの説明が迫られる投資家に見せられる案件を早く
成長ストーリーの提示既存事業の延長だけでは、中長期の成長をIRで説明しづらい中期計画に載る規模感のテーマを
市場変化への観測拠点顧客の業務や競争環境が組み変わる時期には、変化を観測する専任の目が要る注目領域をひと通り追いかけてほしい

組織の内側の事情

理由背景チームへの期待
既存事業以外での成長機会主力市場の成熟やシェアの上限で、改善だけでは成長余地が細っている次の柱を、できれば数年で
人員の受け皿自動化やAIの浸透で既存業務の人手構成が変わり、余力の向かう先が要る(人を減らす話ではなく、向かう先を増やす話)まず人が先、テーマは後から
中期経営計画との帳尻合わせ中計後半の数字と現有事業の見込みの差分を「新規」で埋める構図。経営者の任期と計画期間の重なりも後押しする逆算された売上目標の達成
挑戦の場づくり「挑戦できる会社」を内外に示す、採用ブランディングと人材リテンションの意図華のある発表と社内の盛り上げ
アセットの活用使い切れていない技術・データ・顧客基盤に、活かす先を与える自社アセットありきの企画

右端の列を見比べると、向けられる期待が理由ごとにバラバラであることが分かります。

どの理由も、それ自体が悪いわけではありませんが、バラバラのまま理解しているとチームとしてはフォーカスすべき対象が何なのか不明確なまま走ることになります。

ミッションは「事業を生み出す体制の確立」

一見これらはバラバラの期待を寄せられているようにも見えますが、いずれも直接売上を欲しているようには見えません。

つまるところこれらは、(キャッシュや人員、アセット等)リソースに余裕があるうちに「よりよい企業経営を目指す」という将来への布石なのです。

では、これらは単一の事業を生み出せたら完了なのでしょうか?
...完了とは言えそうにありません。事業を生み出しても、また同様の課題が訪れる可能性は十分に考えられます。

私たちはこれらの期待がいずれも「事業を生み出す体制の確立」という課題に根ざしていると考えています。
いつどんなことが起きるかはわかりません。企業として重要なのは、事業開発のプロフェッショナルチームが常に新たな可能性を見極め続け、着実に経営の幅を広げていると言えることなのです。

新規事業チームが生まれる建前と本音の理由が、「示すべきもの」を経て「事業を生み出す体制の確立」という一つのミッションに収束する流れ図

短期の数字が出ない部門が示すべきもの

新規事業チームの活動は、BSにもPLにもすぐには反映されません。では数字が出るまで何も示さなくてよいのかといえば、そうではありません。短期の数字で測れない部門だからこそ、別の形の説明責任を先に設計しておく必要があります。

示すべきものは3つだと考えています。

  1. 探索量 — 広大な可能性の中から、取り組む必要のない領域を潰し、より期待できる領域を見つけ出せているか。
  2. 判断基準の蓄積量 — さまざまな意思決定に根拠を残し、次の探索に活かせているか。
  3. 期待値の成長率 — 抱えている案件群の期待値を成長させ続けられているか(ゾンビ化とは何かで詳述します)。

既存事業が予実で説明できるのと同じ水準で、探索を「説明できる状態」に保つための指標です。
逆に、個々の案件の成否だけでチームを測ると、チームは失敗確率の低い小粒な案件に寄っていきます。これは担当者の姿勢の問題ではなく、評価の設計が生む構造の問題です。

事業開発は検証の連なり

新規事業開発の本質は、作ることではなく確かめることです。

顧客は本当にその課題を持っているか、対価を払うか、届けられる形にできるか。こうした確からしくない前提を一つずつ検証し、不確実性を段階的に下げていく。この連なりが「開発」の中身です。
この見方に立つと、進捗とは機能や資料が増えたことではなく、「分かっていなかったことが分かった」ことになります。

流れの全体は、テーマ設定とコンセプト化という入口、検証サイクルを担う推進(ステージゲート)、撤退・ピボット・移譲という出口の3区間に分かれます。

本書もこの順に章を構成しています。

案件は水物、体制と学習は資産

個々の案件は水物です。
市場のタイミング、顧客との出会い、競合の動きなど、コントロールできない変数が多く、どれほど丁寧に検証しても、当たるかどうかは確率の問題として残ります。

一方、体制と学習は資産です。
検証の設計力、言語化された判断基準、検証の結果、探索を守る専任性と予算。これらは案件が終わっても消えず、次の案件の成功確率を底上げします。

だからこそ、1つの事業化に至るには、その探索が「撤退」で終了する可能性を踏まえ、ポートフォリオのように並列で探索する合理性があります。
崩れたら次、と直列で進めるのと、並列で進めるのとでは探索の効率が雲泥の差ですし、何も分かっていない状態の1案件に賭けるのは高いリスクを伴います。

複数の案件が並列で走り、撤退やピボットを経ても学習と判断基準が「体制」という資産の層に蓄積されていく図

新規事業チームが生まれる理由は会社ごとに違っても、求められている本質は「体制」だと考えています。案件の成否を問う前に、事業を生み出す体制が育っているかを見る。
では、その体制の中でチームは何を拠り所に動けばよいのか。次章成功に至るための基本で扱います。

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