顧客の声を起点に、本業のすぐ隣に村を開く
テーマは経営陣が自社の既存顧客の課題を見つけて決定し、現場の担当者が検証のために動き出します。活動の拠点は本社のすぐ近くに構えられ、既存事業の営業組織や顧客基盤と隣り合う環境です。経営の後ろ盾と実在する顧客ニーズの両方が揃っているため、迷いなくスタートできる体制です。
既存顧客の生々しい課題から、検証が素早く進む
定例ミーティングの机には、訪問先でヒアリングした顧客の要望メモが並びます。「あのお客さんが困っている業務を解消しよう」と、具体的な顔を思い浮かべながら施策を議論します。既存の取引先だからこそ連絡も取りやすく、提案を持ち込めばすぐに手応えが得られる環境です。
ところが、既存事業の営業部門との打ち合わせでは雲行きが変わります。「そのお客さんは来期の更新を控えているので刺激しないでほしい」「うちの商材と何が違うのか」といった声が上がります。顧客の役に立ちたいという思いとは裏腹に、社内の縄張り調整に追われる時間が次第に増えていきます。
- 「あのお客さんが困ってるって言ってたやつをやろう」
- 「それ、うちの営業が今の商材で対応しているのでは」
- 「新しいほうを提案して、既存の数字が落ちないか」
確かな需要と信用を頼りに、迷いなく立ち上がる
最大の強みは、確かな需要を出発点にできるため、仮説の検証を最短で進められる点です。誰が使うかわからないものを作る心配がなく、困りごとの輪郭を最初から把握できます。既存事業が長年培ってきた信用があるため、新しい提案であっても顧客が親身に意見を返してくれる恵まれた環境にあります。
経営の明確な後押しがあることも、初期の推進力を力強く支えます。既存の顧客基盤を活かした新規事業は経営陣にとっても狙いが理解しやすく、予算や人員の確保を円滑に進められます。ただし、顧客も販路も既存事業と重なっている配置は、社内での役割分担を巡る衝突を招く原因にもなります。
既存事業との境界が曖昧で、社内調整に埋もれていく
半年が経つと、既存の営業部門から「その案件はうちのテリトリーだ」という牽制が入り始めます。商談のタイミングが既存商材の提案と重なり、どちらを優先して提案するかで現場同士が対立します。経営から明確な交通整理が示されないままでは、目先の売上を守る既存事業の論理が優先されてしまいます。
顧客の取り合いによって新規案件の提案が見送られ、検証の歩みが止まっていくのがこの体制のつまずきです。これは現場の調整力不足によるものではありません。既存事業と新規事業の境界線や評価の仕組みを曖昧にしたまま、体制の立ち上げを急いでしまった構造に原因があります。
企画の初期に、既存組織との役割分担をあらかじめ決める
最初に取り組むべきは、企画段階で既存組織との役割分担と境界線を経営を交えて文書で合意することです。どの顧客のどの課題までを新規事業側が扱い、商談の窓口をどちらが担うのかを明文化します。会社の規模や案件数に関係なく、最初の報告書に境界線の取り決めを1行加えるだけで合意を形成できます。
離れた領域を狙う体制であれば、顧客の探索手法を整えることが先決になります。しかし本業のすぐ隣で開拓するこの型では、顧客基盤が重なるため、社内の境界線を先に引くことが欠かせません。事前に交通整理を済ませておくことで、既存の営業部門は案件を後押しする強力な協力者へと変わります。
いまのチームに、こんな状態はありませんか
- 会議で既存営業とのバッティングが毎回議題になっている
- 既存顧客へ提案する際の社内の線引きルールがない
- 新規事業の定例に既存営業の管理職が同席している
1つでも当てはまるなら、つまずきはもう始まっています。社内の摩擦を防ぎ、新規事業を前に進めるための体制づくりの手順は、この資料にまとめています。
なぜテーマ選びより、体制なのか境界線の放置は、現場の疲弊と社内の信用低下を招く
境界線の曖昧さを放置したまま時間が過ぎると、1年後には社内の調整だけで手一杯になり、顧客への検証活動が完全に停滞します。成果が出ない期間が長引けば、経営陣からの期待は失望へと変わり、人員の引き揚げや予算の削減が現実味を帯びてきます。一度失われた現場の熱量と信用を取り戻すには、多大な時間を要します。
社内調整で足踏みしているあいだも、市場環境は刻一刻と変化し、自社の立ち位置は後退していきます。同じ困りごとを抱える顧客に対して他社が先に解決策を届けてしまえば、せっかくの顧客関係という強みも意味を失います。動けない時間が長引くほど、自社にとって有利だったはずの機会を手放すことになります。
- 3年で白黒をつける社内調整で1年を空費すると、残りの期間で複数案を検証する余裕が失われ、期限内の事業化が困難になります。
- 10年腰を据える途中の判定ラインを設けずに走ると、初期の前進を経営に証明できず、長期の構想そのものが途中で打ち切られます。
現在の体制と営業部門との関係を伺い、摩擦の兆候を整理します。他社の実測例をもとに、自社に適した進め方の気づきをお持ち帰りいただけます。
顧客起点で動く仲間と語り、技術起点の視点を取り入れる
ギルド型と出会ったら、既存事業の隣で顧客の困りごとを起点にする共通点から、社内調整の苦労話で大いに盛り上がれます。開拓村型とギルド型では起点が異なるものの、社内で直面する悩みは共通しています。営業部門との連携方法や提案の線引きなど、生々しい調整の実践知を分かち合えるはずです。
実験室型とは、現場発の技術を武器に本業と離れた領域に挑む姿勢が正反対です。顧客の顔が明確に見えている自分たちに対し、相手は技術の可能性から探索しているため、初めは話が噛み合わないかもしれません。しかし、既存の枠にとらわれない発想の広げ方から、自らの体制に欠けている着眼点を学べます。















